ワキガ手術の跡|手術を受ける前に必ず知っておきたいこと
この記事でご紹介すること
普段からワキガについて悩んでおり、「手術を受けてみたいけれど、傷跡が残りそうで不安……」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ワキガ手術とは、具体的に、ワキガの臭いのもとであるアポクリン腺という汗腺を手術により、摘出することをいいます。
臭いのもととなるアポクリン汗腺自体を摘出するので、高い治療効果が期待される一方、手術をすることで生じるリスクもあります。
そのリスクの一つが、ワキガ手術によって残る「傷跡(治療跡)」です。
今回の記事では、ワキガ手術によって残る傷跡の程度、術後に傷跡が癒えていく過程、傷跡を修正する治療について、解説しています。これからワキガの手術を考えている方をはじめ、術後の傷跡で悩んでいる方は、ぜひご一読ください。
手術を検討する前に必ず確認したいこと
ワキガとアポクリン腺の関係性
アポクリン腺とは、ワキの下など特定の部位に分布する汗腺のことを言います。このアポクリン腺の数は人によって大きく差がありますが、誰にでもあります。アポクリン腺からでる汗自体に臭いはありません。しかしこの汗が皮膚表面の細菌と混ざり合うと、酸化し、不快な臭いになるといわれています。
ワキガかどうかがわかる、“ガーゼチェック”とは?
ワキガは、自分自身で判断することが、難しい場合があります。メンタル的な問題で、ワキガではないのにワキガと思い込んでいるケースも考えるからです。クリニックでは、検証のために脇にガーゼを挟み、数分間ガーゼを挟みながら汗をかく動作をしてもらい、その後、医師または看護師がガーゼの臭いをかいで判断するチェックをすることがあります。これを、ガーゼチェックといいます。
ワキガ臭は現状、数値としての基準が設定されていません。ガーゼチェックで判断をします。その結果、下記にあるレベル3以上の診断が下された場合、保険が適用されます。
【各レベルの違い】
レベル1=全く臭わない
レベル2=臭う
レベル3=鼻を近づけると臭いがわかる
レベル4=鼻を近づけなくてもわかる
レベル5=カーゼを手に持つだけでもわかる
このように、自身がワキガかどうかを「断定する」ことは難しいですが、事前に「ワキガである可能性が高いかどうか」は確認することができます。そして可能性を探ることにより、次に自分が取るべきベストなアクションが何なのかを考えることができます。下記に記載ある「ワキガのセルフチェック」を実施してみてください。
もしも、ワキガの可能性が低いのであれば、まずはデオドラント剤などの臭いを予防する対策グッズを使用してみる、可能性が高いのであれば、直接専門医に相談をしてみましょう。
ワキガ手術以外にも治療方法は複数選択肢があり、あなたに合った治療方法を提示してくれるはずです。
ワキガのセルフチェック
ご自身でワキガである可能性が高いかどうかを判断できるような、3つの質問を設けています。
1つでも該当するようなものがあれば、ワキガの可能性があるかもしれません。該当するかどうか確認してみましょう。
注)あくまで、ワキガの可能性を示唆するものです。仮に全てが当てはまったとしても、ワキガだと断定する根拠にはなり得ませんので、ご注意ください。必ず医師の診察を受けましょう。
耳垢が湿っている
耳垢の“湿り”の有無は、ワキガの判断材料の一つ。耳垢が湿っていると、ワキガの可能性があります。
両親がワキガである(遺伝)
両親のどちらかがワキガであれば50%、両親が2人ともワキガであれば75%という確率で子どもにワキガが遺伝するといわれています。
親がワキガなら子どもも100%ワキガになるとはいい切れませんが、一つの判断材料としてください。
着用している衣類のわきが黄ばむ
アポクリン腺には「リポフスチン」という色素成分が含まれます。わきが黄ばむ原因はこれだけではありませんが、このリポフスチンが衣類を黄ばませる原因になることもあります。
術後の経過と傷跡の変化について
上記セルフチェックと医師の診断の結果、ご自身がワキガだと判明し、手術を行ったと仮定し、話を進めていきます。
術後、もっとも気になるのが手術による傷跡ではないでしょうか?
この章では、手術後の傷跡がどのように変化していくか、時系列順でご紹介していきます。
術後から2週間後
2回目の抜糸後、お風呂には入れるようになりますが、まだ傷口が敏感になっているため、直接患部を洗うことはできません。
腕を急激に動かしてしまうと切開部が剥離する場合がありますので、あまり動かさないようにしましょう。
1カ月後
患部が洗えるようになり、傷はかなりきれいになります。しかし、皮膚の硬さと茶色の色素沈着がまだある状態です。
3カ月後
色素沈着は徐々に薄くなり、皮膚の硬さも取れていきます。まだ少しつっぱった感じがすることもあります。
半年後
かなり皮膚の硬さが取れてきます。色素沈着はまだ薄く残っていることが多いです。
通常、半年~1年経つと手術跡もほぼ目立たなくなり、硬さも術前の状態に戻ります。しかし、これは一般的な治癒の経過であって、1年を過ぎてもまだ残ってしまう方もいらっしゃいます。
傷跡といってもケロイド、黒ずみ、塗った傷跡、深さ、大きさ、体質と様々です。万が一、半年から1年経っても傷跡が消えない場合、あなたに合った傷跡治療を相談してみましょう。もちろん、当院以外のクリニックでワキガ治療を受けた患者様もお気軽にご相談ください。
万が一、ワキガの手術で傷跡が残ってしまった時に読んでもらいたい傷跡治療について
次に、術後の傷跡修正について、お話をしていきます。
中には、ワキガが完治しても傷跡が残っていることにより、ワキガだったことがバレるのではないか……と不安に思われている方もいらっしゃいます。
手術による傷跡が気になったら、まずは医師に相談をしましょう。
傷跡修正を、まず手軽に試せる方法として炎症を抑えるハイドロキノンを気になる患部に塗り込むという方法があります。
炎症後に起こる色素沈着のメカニズムは、皮膚の一部が炎症を起こし、その炎症が沈静化してから発生します。この色素沈着はメラニン色素の沈着です。
ハイドロキノン単体でもかまいませんが、一緒に使うことでさらに効果を高める成分があります。それは、トレチノインと呼ばれる成分で、ハイドロキノンの吸収効果をサポートします。
もし、傷跡治療を迷われている方は、まずハイドロキノンやトレチノインなどの活用を検討してみてはいかがでしょうか?
この2つを使用しても良くならず、どうしてもワキガ手術の傷跡が気になるのであれば、その他の傷跡治療を検討してみるのもよいでしょう。
5つの傷跡修正の治療法
ワキガ手術の傷跡を目立たなくする施術には、いくつかの治療法があります。基本的な傷跡修正の治療法を7つご紹介します。
1.レーザー治療
色素沈着を起こしている場合、レーザー治療が効果的とされています。
傷跡の表面を薄く削るエルビウムヤグレーザーと、レーザーにより傷跡のある患部に小さな穴を開け自然治癒を促し治療するフラクショナルレーザーが、傷跡治療に適したレーザーとされています。
2.切除縫縮(せつじょほうしゅく)
傷跡を切り取り、縫合していきます。
また縫い合わせる際、故意的に縫いしろを盛り上げ、半年後には一本の髪の毛程度の傷幅になるように仕上げます。けがや火傷、手術の傷跡など、目立つ傷跡を縫合(ほうごう)方法によって目立たなくする治療です。
切除法の中にもいくつか種類があります。
・切除術~分割切除術
幅の広い傷跡、隆起、陥没している傷跡に対して、切り取って縫合する方法です。
一度で縫合できないくらい幅がある傷跡に対しては、初回手術から半年以上経過してから繰り返して切除します(分割切除術)。
・Z形成術
傷に引きつれがある、ケロイドがある場合に傷跡をZ型にカットして取り除きます。
・W形成術
傷跡がジグザグに見えるよう修正し、影を分散させて目立たないようする治療。
3.植皮(しょくひ)術、皮弁形成(ひべんけいせい)術
幅の広い傷跡や、ゆがみが生じやすい部位に合った方法です。他の場所から組織を取って移行するので、色の変化が残ってしまうこともあります。
4.ケナコルト注射
治療跡がケロイド状に赤く盛り上がった状態の場合、ケナコルト注射を打ち盛り上がりを落ち着かせます。その後、切除手術など他の治療を組み合わせて、傷跡治療を行うこともあります。
5.ティッシュエキスパンダー
手術で皮膚の下に組織拡張器を埋め込み、数カ月かけて生理食塩水を注入し、組織拡張器をふくらませます。これにより皮膚が伸び、この伸びた皮膚を使って傷跡の部分の補てんに使います。
術後の傷跡は、もともとの手術跡の深さや傷跡修正の手術結果が違うなど、人により異なります。傷跡の種類にあった治療方法を行わなければならないため、必ず専門医へ相談しましょう。
大切なことは、信頼できるドクターとクリニックを選ぶこと
現在の医療技術では、傷跡を目立たなくすることはできますが、完全に消すことは難しいです。
よって、ワキガの手術を受ける前に、治療のメリットだけでなく、手術におけるリスクをきちんと把握することが重要です。
医師の技術によっては、目立たない治療跡で手術を行うことができますので、信頼できる医師が見つかるまでは、治療を決定しないことをおすすめします。
また、手術によるワキガ軽減の効果は高い期待できるものの、本当に自分にあった治療方法が手術なのかを今一度考え、ベストな治療方法を選べるようにしましょう。